昨年子供が生まれてからは、本屋に立ち寄った時は必ず絵本コーナーものぞくようになりました。もちろんわが子のために何かいい絵本はないかなという思いなのですが、子供ではなく自分のために購入してしまうことが多々あります。そういう絵本はたいてい子供の反応は薄いのですが(笑)
このブログの読者の中には私と同じように、心の琴線に触れる方もいらっしゃるのではないかという事でご紹介させてください。

あいうえおの本

作者:安野 光雅
出版:福音館書店
初版年月日:1976年02月20日
定価:1,650円(税込)

その名のとおり、あいうえお五十音が一音ずつ丁寧に紹介されています。1見開きごとに、左ページには木組みのひらがなが、そして右ページにはその文字で始まるものの絵が数個描かれています。

まずはその絵の美しさに息をのみます。左ページの木組みの文字は木目まで美しく描かれ、右ページの絵はまるで百科事典のようなリアルなタッチでモチーフがとても丁寧に描かれています。うっとりです。絵のモチーフにはどこか懐かしいさや日本の伝統文化を感じさせるものが多く、中には少しくすっとしてしまうチョイスも。次は何が来るのかと最後のページまで楽しめます。

そして何より注目してほしいのはひらがなやモチーフをぐるりと囲んだ飾り枠。よくよく見るとその中にもそのページのひらがなで始まる植物や生き物や道具がちりばめられています!それも手書きとは思えないような緻密さと完璧な配列で。このアート作品のような見開きが50音、総ページ数でいうと104ページ(!)もあって、その仕事ぶりにはただただ感動してしまいます。これは少しコスパが良すぎるのでは..と心配になるほどです。

最後の方にキャプションページがあり、メインの絵から飾り枠までそれぞれのページで使用されたものの名前が全て載っているのも重要なポイント。この花はの名前は?と辞典のように調べて楽しむことができます。また、今ではあまり見かけなくなった玩具や道具をみて、これはどうやって使うものだろうかと、想像し、調べることで日本の伝統文化を知り、当時の道具の美しさにも気づくことができるのではないでしょうか。まだこの絵本に興味を示さないわが子(もうすぐ1歳半)も、ひらがなを覚え始めるころには、各ページに隠されたものを一緒に探しながら、字を覚えるだけではない、日本語の美しさを感じたり想像力を働かせることができればいいなと思います。

作者は画家・絵本作家の安野光雅さん。昨年12月24日に94歳でお亡くなりになりました。直前の秋ごろまで仕事を続けられていたそうで、著作物を調べると絵本だけでも沢山出てきます。小さいころに幼稚園で見ていただまし絵の本の作者である事も最近になり知りました。どれもきれいで不思議で、少し怖いけどなんだか楽しい、大人も子供も惹きつけられる魅力ある絵本だとおもいます。古いものは入手困難なものも多そうですが、今後見かけた場合はぜひ手にとって見ようと思います。まずはアルファベットバージョンである「ABCの本」をネットでぽちり。